「自分探しの旅に出たい」
そんなことを言うには年を取ってしまいましたが、それでも「今の環境から少し離れてみたい」と思うことは未だにあります。
ですが、いざ何か新しいことを始めるときには、”それをするのが合理的ではない言い訳”を積み重ね、結局何もせずに日常を過ごしています。
新しいことをするのって、やっぱり少し、面倒くさいのです。
そんな私が、”することが合理的でない言い訳”よりも”今することが合理的な理由”を多く考えついてしまったが故に起こした行動が、”カンボジア一人旅”です。
旅行の数日前に思い付いたため、旅行中のプランはグダグダ。おまけに乾季なのに雨の日が続き、ゲストハウスの中でじっとしていました。
そんな時にKindleで読んだのが、角田光代さんの『幾千の夜、昨日の月』です。
この本は”夜”をテーマにした角田光代さんのエッセイですが、旅先での夜の思い出も綴られています。
訪れる前のイメージとは全く違う旅先に驚く角田さん。ときに後悔もする角田さん。
「旅をしてみたのに、思っていたように楽しめないな」と旅先で私は落ち込んでいましたが、「角田さんも似たような経験をされている」と思うと、楽しめない旅もそれはそれで良いのではないか?と感じられるのです。
そしてこの本には、角田さんの日常のことも書かれています。ご両親のこと、お仕事のこと。
私も本を読みながら自分の日常のことも考えてみましたが、距離も、文化も、日常とはかけ離れているところから考える”日常のこと”は、とても自由に、それでいて冷静に考えられるのでした。
感受性が薄れてきたのか、旅に出ても”価値観が変わる”ということはなかなか起きません。
ただ、普段と違う物事に触れることで、考え方が少しだけ穏やかになるような気がします。「”合理的”って、そんなに大事なの?」って。
それに、自分の周りの環境を少し客観的に見ることができます。「日本って、このままで大丈夫かな」って。
やっぱりとても時間もお金も体力も使う旅行ですが、余裕があるときには積極的にしていこうと思います。考え方が凝り固まりすぎないうちに。少しの面倒くささを乗り越えて…