きっと、ちょうど今の私にハマらない本。
もう少し若かったり、もう少し大人になっていたら、この本に書かれている愛の強さに共感したり、登場人物の気持ちを深く読み取れるのだと思います。
この本は、”主人公が好きになった女性が、不治の病だった” よくある、そんなお話です。
主人公と女性の強い愛や葛藤、そして捉え方によってはとても怖い結末が書かれていますが、私はメインの二人より、周りの人たちの気遣いに心を動かされました。やはり石田衣良さんは、人の感情を描くのがうまいです。
娘が不治の病だと知っているのに、心配した素振りも見せず娘を一人暮らしさせてあげる家族。
自分の息子が難しい恋をしているのに、それをそっと応援する家族。
憎いはずなのに、心配なはずなのに、穏やかに普段通りに傍にいてくれる友人。
自分たちのことで精一杯の主人公たちは恐らく気付いていない、さり気ない優しさと強さが、この本の中にちりばめられていました。
そして私がこの本を読んで感じたもう一つのことは、”不治の病はたくさんある”という衝撃です。
「当たり前のことを何言ってるの?」と呆れられても仕方ありませんが。
勿論、たくさんの危険な病気があることは知っています。若くして亡くなる可能性がある病気があることも知っています。
ただ、小説で取り扱われる病気なら、今はきっと治療法があるのだろうと思っていました。同じ病気にかかっている人が、小説を読んで不安な気持ちにならないように。
それに、自分が病名を知っているもの以外には、不治の病はないのだろうと思っていました。AIが発達した今の時代、医学も相当進歩しているだろうと。
今もあまり認知されていない不治の病はたくさんあり、戦っている人はたくさんいる。
そんな当たり前の、知っていなければいけないことに、未熟で大うぬぼれな私は衝撃を受けてしまいました。
私は幸い、美丘さんよりは長生きできています。今のところ、何かの病気にかかっている気配はありません。
ただ、やはり、もう私の命のリレーは始まっていて、残りの走れる距離も少なくなっていて、元気に走れる距離はもう半分もないのかもしれません。
だから私も、美丘さんのように懸命に、どの一瞬も輝きが少しでもあるように、毎日を過ごしたいと思います。
リレーのバトンを渡す相手は、まだ見つけられていませんが。
おすすめ度 :★★☆☆☆
ストーリーの面白さ:★★★☆☆
本からの学び :★★☆☆☆
繰り返し読みたい度:★☆☆☆☆ (十年後なら、きっと感じ方は変わるのかな・・)